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2009年3月28日 (土)

我が敵は我にあり!!キャプテンRの戦い 最終章

前回の続き

5年生の身で川口道場のキャプテンを任され、その中で順調に成長を見せてくれたR。

しかし、11月に行われた大会で、軸足に大けがを負ってしまったことでその順調に来ていた成長の歯車が少しずつ狂いだしてしまった。

レントゲンの結果足の骨には異常が見られなかったが、足の痛みがなかなか引いてこなかった。軸足をつくことのできない状態が一カ月以上続いた。
その間、の練習というのもいま一つ気迫に欠けたものとなってしまいました。

Rはその間、トレーニングを続けたのですが、Rはこのトレーニングが大の苦手。体のわりに力がなく自分の体を支えきれない。誰かが付きっきりで指導していればできるのだが少し目を離すと弱い自分に負けてしまい手の抜いたトレーニングをしてしまっていた。

Rにとって、苦手なトレーニングの日々、そしてなかなか足の痛みが引かず柔道ができないというストレスが重なっていった。

そんなストレスを抱える日々をおくり新しい年を迎えやっと練習ができるぐらいまで足が回復した。
が、長期間のけがによる休みとその間での体重増大、そして痛めたほうの足を無意識にかばってしまう心の問題もあり、復帰してすぐの練習は形が崩れてしまっておりなかなか以前のような練習ができなくなっていた。
その練習を休んでいた期間で周りの子供達は着実に実力を伸ばしてきており今までは簡単に投げれていた子も投げれなくなっていた。

この自分の思いとは違う動きにRとても焦りを覚えるようになっていた。気持ちばかりが前に出て体がついてきていない。打ち込みもあれほどきれいだった打ち込みに魅力がほとんどなくなってしまった。
ここで、しっかり形から戻してRの練習をじっくり一から作り直せばよかったのだが、年明けから試合が続き、その試合に間に合わせるため、充分な修正が出来ないままとなっていた。

それでも、試合では満足のいく内容でないにしろ、結果を残すことができていた。R自身いままで勝ってきたというプライドがあり、今まできれいに投げて勝とうとしていた柔道ではなく体で巻き込んででも勝利しようとした柔道になってしまってきていた。

この試合内容を見て、川口先生が『このままではRがダメになるから、一から作り直そう』と、提案。ここからRの修復に力を注ぐことにした。
釣手を離して巻き込みに行くような動作を徹底的に注意し、釣り上げる動作を何度も反復させた。
体で巻き込まないように、打ち込みの修正、投げ込みの練習の強化など行ったが、Rの『今まで勝っていた』というプライドと、『キャプテン』としての責任感からか、どうしても試合になってくると巻き込むような動作になってしまっていた。
それでもしつこく、そして厳しく巻き込まないように指導していくと、今度は中途半端な技をかけるようになってしまった。確かに巻き込まなくはなったのだが、足だけ掛けるような技や胸を合わせず遠い距離のまま技をかけるようになり、技をかけてもすぐ戻るような『軽い技』になってしまった。
そんな、悪い流れのまま、ある大会を迎えた。
その大会とは、マルちゃん杯中部少年柔道大会である。この大会で6年生全員のチームで戦うことができ、非常に期待していた大会でもありました。しかし組み合わせを見て・・・・・・shock
相手はお隣石川県でも有名な強豪チーム何度か合同練習をさせていただいているがまだうちでは歯が立たないチームでした。
なんでよりによって一回戦で・・・・という気持ちもありましたが、今のこのチームでどの程度戦えるのか?という期待感もありました。
そしていよいよ試合開始。
先鋒から副将まで本当に手に汗握る好勝負、まったく互角の試合展開で0-0のまま大将戦をむかえた。
Rも気合十分で相手と戦った。この試合もお互い引かずの真向勝負。あっという間の2分間でした。この大将戦も引き分けで、代表戦で勝敗を決めることとなった。
この代表戦を行うにあたって誰を出すのか非常に迷った。最近不調のRよりも実力を伸ばしてきている副将のNを出そうかとも考えた。しかし、この展開で燃える男Rの性格的なこととこの試合で勝利できればまた自信がつき元の良い柔道を取り戻してくれるのではないかという期待を込め、代表戦にキャプテンのRを起用した。
代表戦が始まり、お互い闘志むき出しのまま、全力でぶつかっていた。前半R、中盤向こう、後半お互いに攻めあう好勝負。

お互いポイントのないまま旗判定となった。

緊張の一瞬、

『判定』

という審判の声とともに旗が揚がる。

無情にも、相手の旗が2本上がり判定2-1で敗れてしまった。旗一本の差が大きく感じながらも非常に良い試合をしてくれた子供達にありのままの気持ちを伝えた。
みんな心を一つに戦ってくれたことが非常にうれしく思い。代表戦でRで行って間違いなかったと思っていた。
しかし、勝利できなかったRは、また自信をなくしたままだった。

その後の試合も、自分の思うような結果をだんだん残せなくなっていってしまっていた。練習でも自分を追い込むことができなくなっていき、うまくいかない練習などがあるとふてくされる態度を取るようにもなっていった。

キャプテンとして周りに声だしをさせたり、低学年の世話をしたりとやることはやってくれていたのだが肝心の自分を追い込む、周りにとってお手本となる選手にはだんだん遠のいて行ってしまった。

このままでは、川口道場全体が悪い流れになってしまう。指導陣もそのように考えるようになっていった。
そこで、川口先生が『一度、じっくりRと話し合う』と決め、Rを1日道場に泊めた。川口先生と二人っきりでじっくり話し合った。このときの内容はどのような話をされたのかは明らかではないが、次の日、自分たちが出た実業団の試合の付き人としてRはついてきていた。

自分達に付き添い、水分などを運んでいるRはどこかすっきりしているような感じを受けた。

この日からRは徐々に元の向上心のあったころのRに戻りつつあった。練習中どうしても巻き込むような動きになってしまったり、思うように投げれなくても、すぐにもう一度チャレンジするような元の良い時の練習の取り組み方に直っていった。

日々、弱い自分と戦い自分のため川口道場のみんなのため、もう一人の自分と戦い続けていた。

しかし、崩れた形を戻すにはだいぶ時間がかかり、その間に行われた試合では、納得のいく結果が残せずにいた。それでも、以前のようにふてくされることなく一つ一つ修復作業を続けていった。

そして小学生最後の試合で、やっと納得のいく一本を取ることができるようになっていった。
今までは釣手がすっぽ抜け体で巻き込むようにして投げていた形から、相手を下から上に吊り上げきっちり投げて一本をとれるように修正されていた。

一本を取ったどの技も片足で立ったまましっかりバランスを取ってきれいに投げ切っていたので最後の試合でしっかり修復できてきたという手ごたえを感じることができた。
しかし、決勝トーナメントでは、素早い組み手の相手に組むことができず、判定で敗れてしまい結局結果を残すことが出来ないまま小学生最後の試合を終えた。

試合後、自分はRに、

『試合は負けてしまったが、投げる技という意味では修正ができてきてる。本当ならもっと早い段階で、勝負を考えさせずに修正に力を注ぐような指導ができればよかったのだが、それをしてやれずにすまなかった。でも、今日のお前の動きからは次につながる手ごたえを感じた。この気持ちと、技術を忘れずにこれからもがんばれ』

と伝えた。

小学生最後の大会で、今までのような成績を残させてやれなかったという自分の無力さを感じRに対し申し訳ない気持ちを抱えていた自分だったのだが、3月に行われた卒業生を祝う会という行事で、R達が残してくれたとても大きなものに気づくことができた。
この卒業生を祝う会では、指導者から卒業生へ、保護者から卒業生へ、そして卒業生かいら指導者へとたくさんの贈り物がされた。その、物が良かったということではなく、お互いに感謝の気持ちを分け合うようなそんな素晴らしい雰囲気での祝う会となっていた。

その場にいた自分は、これもRがキャプテンとして道場をまとめてくれた一つの結果ではないかと強く感じた。
Rがキャプテンになり、弱い自分と戦ってもがき苦しみながら、柔道という道を歩んでいった。出来ないなりにみんなが一つになろうとしていろいろな壁を乗り越えていった。その子供達の頑張る姿を見て、指導者も、保護者の方もいろんな力をもらえたと思う。
Rの持っていた小さな夢。そして川口道場の子供達の持っている小さな夢。その頑張っている姿を見ているだけで大人たちはいろんな夢を見させてもらえる。そのいくつもの夢が重なり合って、この卒業生を祝う会では喜びをわかちあっていたように思えた。

この姿を見ているとある歌の歌詞が浮かんでくる・・・・・・

我が敵は我にあり

我この道を進む

小さな夢が重なって

喜びわかちあう

Rを見ているとこの歌が頭の中に流れてくる。

そしてRが作り上げてくれた道場の雰囲気から、柔道の基本理念である『精力善用』、『自他共栄』を感じることができる。

気持ちが弱く、自分に甘いところがあるR。
キャプテンとなってからもそういう部分に負けてしまっていた時期もあるが、いろんな時期を乗り越えて今の自分と向き合えている。
これから、Rにとって新しいスタートラインにつく。
今までより、つらく、苦しいことが多くなるだろうが、これからも弱い自分と戦い続けてほしい。

もしつらく苦しい時、弱い自分に負けそうになれば、川口道場での経験を思い出してもらいたい。
道場で、みんなのために頑張った行動の一つ一つが、Rの心を守ってくれる盾となりその思い出の一つ一つが、暗く苦しい道に一筋の光となって照らしてくれるだろう。

2年間、つらくて苦しいキャプテンとしての責務を見事やり遂げてくれたR。そのRがキャプテンとして弱い自分と戦った姿がきっとこれからも後輩たちに伝わっていき川口道場の伝統として伝わり続けるだろう。

こうして川口道場・志ノートにまた一人、川口道場を飛躍的に成長させてくれたキャプテンRの名が刻まれる・・・・・・・おわり

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コメント

Rがスポ少にいた時は、身体は抜群に大きいが気持ちの優しい大人しい子でした。と言っても試合では臆することも無く勝負できる子でした。でも自分から感情を出したり、アピールするタイプでは無かったのではないでしょうか。coldsweats02
そのRが、今では大きな声を出し仲間を鼓舞し、後輩には積極的にアドバイスし、自分の試合ではangry気迫を前面に出す素晴らしい主将に成長しました。
たくさんの経験を糧とし、大きな『漢』(おとこ)になりましたね。(体型もcoldsweats01)
卒業おめでとうsign01 川口先生・赤ペン先生、ありがとうhappy01

投稿: クリリン会長 | 2009年3月30日 (月) 16時50分

クリリン会長コメントありがとうございます。
Rはいまでも体が大きくて気持ちの優しい男ですbearing
でも、川口道場のキャプテンとして本当によく頑張ってくれたと思います。ここまでの成長をしてくれたのは、本人の努力のほかにもクリリン会長やHA〇E監督をはじめとする色々な先生方にお声をかけていただいたからだと思います。ありがとうございました。
とはいえ、柔道家としてはまだまだの選手!!
これからの修業を通じて大きく成長していってもらいたいです。
なのでこれからも温かく見守ってくださいますようお願いいたします。

投稿: 赤ペン先生 | 2009年3月31日 (火) 11時05分

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