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2009年2月25日 (水)

泣き虫Hの志ノート 涙の成長日記 最終章

前回の続き

徐々に弱い自分から逃げなくなり、たくましく成長しているH。

そんなHも6年生となり小学生最高学年として、チームを引っ張っていく存在になっていた。

そんなH達の力が試される大会が行われた。

その大会とは、『マルちゃん杯小学生柔道大会中部予選』だった。

6年生全員で団体のチームを組むことができるので、この大会でどこまで勝負できるのか?という期待感がある大会でした。

そんな期待を込めて望んだ、マルちゃん杯。しかし、その組み合わせは非常に厳しいものがあった。

何と一回戦で、石川県の強豪、T中錬正塾と対戦することとなっていた。

このチームは大変素晴らしい柔道を行うチームであり、自分たちも目標としているチームであった。
その特徴は何と言っても強力な担ぎ技。体幹の力が非常に強いのと、どんな大きな相手にも気持ちを折ることのない精神的強さを持った素晴らしい選手たちをそろえたチームである。

『よりによって、何で一回戦で・・・・・・』

というのが正直な気持であったが、その反面、『今の子供達はどのぐらい勝負できるのであろう?』というひそかな期待感もあった。

そしてこの試合で、子供達は本当に素晴らしい試合を行ってくれた。

その流れを作ってくれたのは先鋒を務めたHであった。

先鋒の相手は、まだ4年生であったが、ただの4年生ではない。
本当に素晴らしい柔道を行う選手だった。体もそんなに大きくないのだが、柔道の質はぴか一。6年生のHですら取られてしまうかもしれないという不安があった。

試合が始まり、開始早々相手の力強い組み手で押し込まれ、Hは自分の形になれなかった。開始早々の猛攻に何とか踏ん張り相手の攻撃を何とかしのいだ。
いつもなら、この展開になると、気持ちで引いてしまい、受けがもろくなってしまうというのがパターンだったが、なんとHはそのあと大きな声を出し、果敢に相手に飛びかかっていった。
相手の組み手のうまさに一度も自分の形になれず危ない場面もたくさんあったが、それでも前に出ての柔道を続けた。相手のどんな圧力にも屈せず気持ちを折ることなく試合終了。引き分けであった。

このHの魂をぶつけるような戦いで、ほかのメンバーも触発され、強いとわかっている相手に対して、自分のすべてをぶつけるような試合を行っていた。いやもしかしたら自分の実力以上のものが出ていたかもしれない。そうして大将戦まですべて、気迫あふれる戦いを続け、全試合引き分けで代表戦となった。

そして運命の代表戦。キャプテンの戦いをみんなで見守った。互角の戦い。手に汗握る攻防。Hも大きな声で応援していた。

何のポイントもないまま試合終了。判定となった。

その判定の結果、我々の願いもむなしく判定2-1で敗れた・・・・・・・

試合後、子供達を集め言葉をかけようとしたとき、目の前にいたHから大きな一粒の涙がこぼれ落ちた。
この涙を見た瞬間、自分は言葉を失ってしまった。自分の目頭にも非常に熱いものがこみ上げてきた。
自分たちより実力のある相手、そしてその強さを身をもって知っている強敵に対して、自分の持っている力以上の戦いを見せてくれた子供達。
そして、あの『自分さえ楽できれば、仲間なんてどうでもいいから練習を休ませてほしい』と泣いていたHの、団体戦で勝利できなかった悔しさから流すチームの一員として、仲間のために流していた涙を見て、自分の中にいろんな感情がこみ上げてきた。

勝負で勝たせてあげれなかったという指導者としての力不足を感じながら、それでもこのHの仲間とともに流すことのできる涙にうれしさを感じることができた。
いままでの、H自身のための涙ではなく、仲間のため、努力の結晶のようなくやし涙に今までとは違う感情が映っていた。

この涙の質の変化が自分たちには妙にうれしかった。柔道を通じて一番大事な成長をしてくれたと感じずにはいられなかった。

このHの素晴らしい成長を確認するにいたって、このことに触れておかなくてはならない。

気持ちも弱く、いつも泣いてばかりだった泣き虫H。

このHには、まめに続けている”あるもの”があった。

それは、川口道場小学生みんなに持たせている志ノートを書いてくるということである。

このノートは、自分が川口道場に指導にきて、最初に感じたチーム力向上の必要性と子供たちとの信頼関係構築のために書かせていたノートで、何か試合や合同練習があるたびに子供たちに書かせるようにしていたノートである。

最初は自分が書いてくるように指示を出さなければ書いてこなかったノートであるが、次第に指示を出さなくても自主的にノートに感想や質問事項を書いて持ってくるようになってきた。

とくにHは、なにか、合同練習や試合があると必ず書いてきた。また、自分が出た試合だけではなく団体メンバーから外れて選手になれなくても仲間の応援で来た試合をみて、仲間の動きを分析しそしてそれを自分に当てはめてノートをつづってきたのだった。

その内容は、決して長文ではないが、良かったこと、悪かったこと、これからしていきたいことと大変要領よくまとめられている。

だいたいたくさんの子供たちのノートを見ていると、自分達指導者が子供たちにかけた言葉そのままが書かれていることが多い。
それはそれで、しっかり自分達の話を聞いていた、自分達の気持ちが伝わっているという証となるのだが、このHの日記には、自分達が『教えるべきかどうするか?』と迷っている事に対して、Hに伝えていないのに『どう対応すればいいのか教えてほしい』と指導を求めるような文章が書かれていることがあった。

このように自分で考える能力があるため、練習内容も工夫されていたり、寝技にしても大変賢い攻め方ができるようになっていった。
だからHの練習を見ているととても面白い。
『あっ、今こういうことを意識して練習しているな!!』
という事が見え隠れするので、動きを見ていても常に新しい発見があった。寝技にしても自分独自の寝技の入り方『Hスペシャル』を編み出したりと、指導者の目から見てもとても頼もしい練習の取り組み方を行ってくれていた。

このノートの一ページ、一ページに、Hの成長の記録が残っている。

ホームシックにかかって泣いていたH。練習がいやで練習前に吐きそうになりながら泣いていたH。何度も弱い自分に負け逃げ出そうと泣いていたH。

そんなHが、志ノートに、今の自分を書き出し、自分と向き合い、そして、弱い自分と戦った記録がそこにはしっかり刻まれている。その志ノートはすでにもう三冊目。いまだにHの成長の記録として刻まれ続けている。

Hの柔道……それは涙と共に歩まれてきた道である。苦しい時、つらい時、逃げ出したいときに流されていた涙は、成長とともに、悔しい時、仲間のために流されてくるようになってきた。そしていつか最高の喜びの時に流せるようになってもらいたい。

そんな涙で刻まれた志ノートと共に、これからも大きく成長し続けてくれ sign03

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コメント

いつも、読ませていただいています。
今回のお話は本当に感動しました。
Hくん?は、柔道をやってすごくたくましくなったのですね。私の息子も柔道をしていますがまだまだ甘えん坊で困っています。Hくんのようにたくましくなってくれることを願っていますhappy01
これからも楽しみにしております。

投稿: kokoro | 2009年2月25日 (水) 14時55分

kokoroさんコメントありがとうございます。
Hは最初に会ったときに比べとても気持ちが強く成長してくれた子です。そして何より柔道が好きになってくれた子でもあります。柔道を好きになりその事を通じて心が強くなってくれたことに非常に喜びを感じます。まだまだこれからの選手なので、自分たちもこれからの成長を期待しています。

投稿: 赤ペン先生 | 2009年2月25日 (水) 23時55分

weep川口道場生物語ありがとうございましたshine練習前に吐く孫を見て「何でそこまでせなアカンの?thunder」と言った祖母。体育会系のnashi-papa&mamaにとってつらい時でもありましたdown。そこから逃げ出さず、体小さくとも大志を抱きpunch、闘志を燃やしながらbomb、同志と共に涙を流すcrying…。生死をさまよい生まれてきたHaruにとって、成長させてくれたのは川口道場(柔道)だと確信していますscissors。これからもよろしくお願いしますsmile

投稿: nashi-papa | 2009年2月28日 (土) 22時39分

nashi-papa さんコメントありがとうございます。
Haruは、いろんな意味で一番成長した子だと思います。この子の成長を見て、柔道の基本理念である『精力善用』・『自他共栄』の精神を改めて認識することができました。
そして一番うれしかったのは、中学校に行っても柔道をやりたいと自分で決めその道を歩みだしたという話を聞いたことです。
あの泣き虫Hが、ここまでたくましく成長したことを心から嬉しく思います。
これからの活躍を心より期待しています。

投稿: 赤ペン先生 | 2009年3月 2日 (月) 13時18分

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